デザイン・考案
絵画や彫刻を制作する時、デッサンやスケッチを十分に行い、構想を練った上で制作に入りますが、手描友禅染においても、その過程はまったく同じです。ひとつのキモノを創るためには、まず、"どんなキモノを創るのか"を念頭においてから制作に移らなければなりません。普段から美しい絵や風景を見て絵心を持つことが大切ですが、それに加えて、キモノ制作の約束事等をすべてマスターしておくことは当然必要なものといえるでしょう。
それらをふまえた上で、さらに、出来上がったキモノを着る人の年齢や目的を考慮し、それにふさわしいキモノを創らなくてはなりません。
生地に下絵を描く前の考案段階に、模様の構図、色彩の配色、配置などを決め、全体のイメージを作っておく。それがキモノづくりの第一段階といえるでしょう。

デザイン
どういったキモノのデザイン(図柄)を描くかを決めてから、雛形〈ヒナガタ〉のようなキモノのパターン図に、全体の構図を木炭などで描いていきます。模様の骨格・流れ・ポイントとなる柄の位置等を頭に置き、着用した時の状態を想定しながら描きます。

下絵の道具類

模様づけ(デザインの基礎知識)
キモノは、礼装・晴着・社交着・街着・家庭着等の区別を、主に模様(色も含む)とその配置で表わしています。また、生地の質感や袖の長さなども考えられますが、それらによって、模様のつけ方も左右されます。
それらのキモノの区別をより美しく、効果的に表現するために、模様の配置を行なうことを「模様づけ」と呼んでいます。
現在の模様づけを大別すれば、慶長模様風の総模様は振袖に、寛文模様風のパターンは訪問着に受け継がれています。また、芸能関係の模様づけにも、片身替り・熨目〈ノシメ〉・首抜模様・文字模様等、特徴的なものがあり、それらも、取り入れられています。
これらのパターンをT・P・Oに応じて自由に変化させているのが訪問着です。総模様風のもの、裾模様風のもの、肩裾模様風のもの等をベースに、振りちがいにしたり、胸や肩に模様を加えたりと、豊富なバリエーションで表現しています。
振袖、裾模様紋付(留袖)、訪問着の模様は、縫目を渡って模様展開がされています。このようなキモノの模様づけのことを「絵羽づけ」と呼び、模様のキモノと総称しています。
また、生地を裁断せずに、長い反物のままで模様づけしたものに、付け下げと着尺があります。
!付けさげ=キモノの形に仕上げた時、模様がすべて上の方に向くようにつけられたものです。
!着尺=キモノ全面に、模様を配置した総柄と、飛び飛びに模様をつけた飛柄があります。小紋・中形〈チュウガタ〉・上布〈ジョウフ〉・紬〈ツムギ〉・御召〈オメシ〉等の模様のつけ方です。

<ポイント>
キモノの背面中央より下の部分には、あまり模様をつけません。キモノにはかならず帯をしめますし、その下はでん部にあたるので、模様をつける場合でも、軽くすっきりしたものがよいでしょう。
<ポイント>
肩の部分に模様をつけることは多いのですが、模様の位置が低いと着用した時肩が下がって見えるので注意しましょう。模様の上端を肩線よりも少し上か、肩線いっぱいまでに上げて描くとよいでしょう。


下絵

あたり
雛形をもとに、大まかな図柄を生地に描いていきます。キモノ全面を見て、模様のバランスを保つように、うすい青花液で骨格だけを描いていきます。この時は、あまり細かいところにこだわらず、思いきって描くことが大切です。

下絵を描く
あたりを描いた青花液が乾けば、模様の本体部分などの細かいところを描いていきます。この時の青花液は、生地ににじまない程度の濃いものを用います。
<ポイント>
下絵を描く場合、模様・図柄の勢いを殺さずに描くことが大切です。細部に進むほど全体への目配りがおろそかになりがちなので、途中で何度か視点をはなして全体のバランスを確認しながら描きましょう。

修正
下絵が完了すれば、全体を見直します。訂正の必要な箇所は、水を含ませた筆で、青花の線上をなぞるようにして淡くぼかします。そして乾燥してから、描き直します。

青花紙
青花紙は紫露草(おおぼうし花)の花の絞り汁を和紙に浸み込ませたものです。この花の汁は、青インクに似た色をしており、アントシアンという色素を含んでいます。水に溶けやすい性質なので、生地に付けても水で簡単に流れ落ちるので、下絵の材料としては最適といえます。